伊勢谷運吉
昭和9年9月、奥羽地方の民藝調査の折、柳宗悦は秋田市内を巡り歩き、町はずれの小さな鍛冶屋から「それは美しい山刀」と「今まで見たどの五徳よりも美しい五徳」を買い求めた。受取證には秋田市保戸野表鉄砲町伊勢谷運吉と記してあった。
山刀と五徳は民藝の展示販売会に出品され、バーナード・リーチをはじめ多くの仲間から注文が寄せられた。
一年の後、柳は河井寛次郎とともに再び鉄砲町を訪ねたが、すでにその店はなく、聞けば「あぁ伊勢谷さんですか、亡くなったですよ」。
昭和10年11月、柳は『思ひ出す職人』という一文に草した。
「亡き伊勢谷よ、おれは君の作ったものを民藝館のために買っておいたことを実によかったと思ふよ。ふりかかった運命などにどうかこだわってくれるな。このことは誰の身の上にだって実は同じものだ…」
写真は柳宗悦全集第11巻(昭和56年、筑摩書房)。518ページの大著のなかに『思ひ出す職人』4ページが収録されている。当ショップ店頭価格7,500円。
2025/3/18(Tue)
珈琲の楽しみ Ⅱ
ただいまJR秋田駅前のフォンテ秋田ギャラリープリモで「珈琲の楽しみ」展が開かれています。マグカップやコーヒー碗、スプーンなどの展示販売会です。
写真は秋田県立博物館喫茶コーナーの窓際のカウンター。遠景は水心苑の外輪。手前の逆光のマグカップは島根県湯町窯の作で1個3,800円。色はガレナ釉と呼ばれる黄色です。
湯町窯はバーナード・リーチに手ほどきを受けたエッグベーカーが有名ですが、マグカップの持ち手にも英国の風情が漂っています。現品はギャラリープリモでご覧いただけます。会期は3月16日(日)まで。
ちなみに上記のカウンター超しの景色をご覧になりたい方は、喫茶コーナーの自販機をご利用ください。こちらは紙コップで1杯120円です。
2025/3/4(Tue)
芝原の雛人形
千葉県長南町の芝原雛人形は、上総のお雛様として親しまれた土人形です。
この地区では3月3日、山から降りてきた神さまが人形に宿って家々をめぐり、魔を払い福寿を授け、3月4日には山に戻るのだそうです。
その日、神さまを見送るのは子どもたちの役目。それぞれが雛人形とご馳走を携えて里山に登り、人形を掲げ、ごちそうを食べ、うたを歌って別れを惜しみます。
♪おひいなさまよ らいねん ごじゃれ はるのはなみに ごじゃれ … (「季節のわらべうた」より)
写真は、芝原人形四代目千葉惣次さん作の内裏雛。高さ12センチ、横は二人並んで27センチ。価格は16,500円。当ショップ店頭での展示販売です。
2025/2/26(Wed)
ハタハタ
ハタハタは秋田県の県魚。漁期は11月末から12月にかけて。「ハタハタがなければ正月が迎えられない」といわれながら、今年は記録的な不漁で庶民の正月にその姿はありませんでした。秋田市のとある魚屋の値段は1箱4キロ28,000円(100グラム当り700円)でノドクロと同じ値段だったとか。庶民が口にしたのは北海道産や新潟産のハタハタでした。
写真は当ショップ名物のピンバッジのハタハタ。こちらはブリコたっぷりの秋田産。1尾500円で通年販売。遠方の方には送料110円でお送りしております。
2025/2/20(Thu)
珈琲の楽しみ
2月15日(土)からJR秋田駅前のフォンテ秋田ギャラリープリモで「珈琲の楽しみ」展が始まります。マグカップやコーヒー碗皿、スプーンなど全52点の展示販売会です。
写真の逆光に写るマグカップ2個は設楽享良さんの作(撮影場所は秋田県立博物館の喫茶コーナー)。ほんとうの色は白磁の白色。現品は「珈琲の楽しみ」展でご覧いただけます。
また、博物館では同日2月15日(土)から企画展「秋田の宝」が始まります。
春の兆しのギャラリープリモと秋田県立博物館、みなさまのお越しをお待ちしております。
2025/2/14(Fri)
今日 空 晴レヌ
誰も彼も、ただこの一語をいい得る日を待ちたいではないか。長い雨の後、一点の雲もなく、蒼々とした空が晴れ渡る時のすがすがしさは、誰もが味わうところ。だが、空の晴れを待ちわぶ人は多くとも、心の空の晴れる日を待つ人は如何に少ないことか。
青空をみると、「あやかれよ」と我々に囁いているのである。
柳宗悦『心偈』より。
2025/2/8(Sat)
あきたの郷土誌
いま、JR秋田駅前のフォンテ秋田1階ギャラリープリモで「あきたの郷土誌」という古本の展示販売会が開かれています。
並んでいるのは、秋田県内各地で発行された昭和の郷土誌30冊。その多くは簡易製本の小冊子ながら、その土地でなければ得られない事柄がけれんもはったりもない言葉で綴られています。
写真は、昭和初期の秋田市勢と暮らしを伝える読本(とくほん:太平洋戦争前まで国語の授業に使われ教科書)。昭和11年、秋田市発行。
立読みご希望の方は、ギャラリー左奥のプリモカワカミへお申し出ください。展示販売の本の価格は600円~4,500円。会期は2月9日(日)までです。
2025/1/21(Tue)
冬ナクバ 春ナキニ
柳宗悦の心偈(こころうた)の一句。
心偈は、柳が自らの心境を詠んだ短い句の総称。
「うららかな春を人は待ちわびている。しかし春は冬を経ずしては来ぬ。春のために冬があるともいえ、また逆に、春なき冬はないともいえる。人生のこと、またこの法を離れてはあるまい」。柳宗悦選集第二巻『心偈』自註より。
写真は、棟方志功の版による「心偈」の一作。
昭和30年代初め、病床にあった柳宗悦を励ますために濱田庄司の依頼で製作された。
2025/1/15(Wed)
新年のご挨拶
あけましておめでとうございます。
本日2025年1月4日(土)、当ショップの営業が始まりました。
写真は色紙絵「日の丸に唐草文瓶子」。瓶子(へいし)は酒器の一種。陶芸家設楽享良氏の筆。
唐草文様はメソポタミアやエジプトから伝わったといわれるアラベスクの代表文様の一つ。アラブ諸国では食器や陶板に描かれたり、モスクの天井や壁面の装飾に用いられます。
日本でも相撲の行司から泥棒まで広く愛用される有職文様として知られます。図柄の本領は途切れることのない蔓草の生命力。
この年頭に設楽氏の描く唐草文を掲げて、一年の息災を祈ります。
2025/1/4(Sat)
年末年始の休業のお知らせ
2024年12月28日(土)~2025年1月3日(金)、博物館もショップも年末年始の休業をいたします。
写真は当ショップ自慢のしめ飾り。わら細工本体は秋田県美郷町の作。紙紙垂と松と昆布の飾りは秋田市の手仕事工房の作。
このしめ飾りを目印に、幸福の年神さまがショップの許へみなさまの許へ降り来ることを祈ります。
2024/12/27(Fri)